動くと汗がどっと出る湿気の多い季節、木製家具も湿気によるカビに注意が必要な時期です。
閉めっぱなしの扉を開けたり、壁にぴったりつけてある家具をちょっと動かして隙間を開けたり、風を通してあげることでカビの発生を抑えることができますので、気になる方はどうぞお試しください。
さて今回紹介するのは桐箪笥の修理リペア・修復の事例です。
まずリフォーム前にご相談を受けたのが昨年の春。
使用中であったり納戸に仕舞われていたりの時代を経た木製家具の数々を見せていただき、お客様とのご相談の末、まずは桐箪笥3本を修理修復するということになりました。
これが伺った時の桐箪笥の様子です。
引き出し4段のものが2棹、引き出し5段のものが1棹です。
いきなり余談になってしまいますが、箪笥って「棹(さお)」で1棹、2棹と数えるんです。
その理由、ご存知ですか?
まずこちらをご覧ください。
。
箪笥の側面に金具がついています。
正面から見るとこんな形に。
この金具に棹(棒)を通して担ぐようにして家具を運ぶことができます。
その理由は、昔江戸時代に大火事があって箪笥を持ち出せず、このような金具に棹を渡して担げるようになったとのこと。
そこから一棹(ひとさお)、二棹(ふたさお)と棹(さお)での数え方になったそうです。
この金具、このように使うこともできます。
このように2つの箪笥を連結することもできます。シンプルですが機能的ですよね。
さて、本題に戻りましょう。
修理・修復にあたって、時を経た風合いを残したいということで、できるだけ使えるものは使い、今後の使用にあたって問題がある箇所を直していく形で進めていきました。
まず修理後の様子です。
よく見ると似たようなデザインながら、金具もすこしずつ違います。
金具も使用できるものはできるだけ綺麗にして使いますが、紛失してしまっていたり機能しないものは新しい金具にする場合もあります。
まず左側の箪笥から見ていきましょう。
修理前がこちら。
修理した中で一番状態が悪く、触ると木がぽろぽろと細かく粉状になってしまう箇所もありました。
引き出しの段のところにT字のような金具がついていたのですが、金具周りの木部の劣化が激しく、修理後はそのT字の金具はなしのデザインにして直しました。
見た感じが少しすっきりしたデザインになりました。小ぶりな箪笥ですので黒の金具が主張しすぎないで良い塩梅です。
そのような場合は使用に耐えない部分は削り、新しく作り直し綺麗に嵌め込むようにしていきます。
木目なども古い部分に合うように揃えて作り直します。
最下段の右側に小さな小引き出しが2杯ついていますが、本来ついていた扉が紛失していました。
そして、下の小引き出しの右上あたり、削れている場所(色が薄くなって口のように空いている)、お分かりになるでしょうか。
実は、こちらは鼠がガリガリと削った跡なのです。
どうも鼠が通り道にしていたらしく、前板だけでなくさらに貫通して背面まで削られた跡がありました。
こちらも木目を合わせた新しいパーツでしっかり穴を塞ぎました。
削られていた部分も綺麗に取り、新しいパーツに取り替えました。
木目もできるだけそろえてあります。
紛失していた扉も新しく作り直しました。
少し赤みが入った色で塗装し直しました。
金具も綺麗になり、引き出しの開け締めもスムーズになりました。
他の箪笥の細部もご紹介していきますね。
中央の円形の金具、そして四角の枠の取っ手金具、そしてこちらは引き出し側のT字金具はそのままのデザインでどっしりした雰囲気が出ています。
最初にご紹介していますが、今一度Beforeの画像を。
色の薄い部分は、長い間に隙間ができてしまった場所に新しく作ったパーツを埋め込んだものです。
見づらいですが、画像右が小さな色の薄い円形がありますが、ここは節が抜けて穴が空いている箇所へ新しく作ったパーツを埋め込んであります。
引き出しだけでなく、背板側にも隙間ができている場合がありますので、しっかり新しいパーツを作って埋め込みます。
最下段の引き出し右側の扉も綺麗に修復しました。
扉は紐取っ手で開閉できる仕様に。
では、最後に実際にリフォーム後のお宅にご納品した様子をご紹介しますね。
ご相談いただいたのが昨年の春ですから、1年後の今年の春にようやくご納品となりました。
現代の規格化され大量に生産されている家具とは全く違う質感と雰囲気で空間に溶け込んでいますね。
時間を経たものだけが得る存在感があります。
古いものは新しく作り出すことができません。ですので捨ててしまったらおしまいです!
ですので、「あ〜うちにもあったのに捨てちゃった。。。」となる前に、どうしようか悩んでいる古い家具がありましたら、どうぞ当店にご相談ください。
桐箪笥は2つや3つに分かれて連結してあるものがありますので、その一部のみを現在のライフスタイルやお住いの空間に合わせて修理・修復するのも良いのではないかと思います。
1つだけそのような例をご紹介しますね。
こちらは以前修理・修復した桐箪笥ですが、2段のみの構成です。
こちらを綺麗に修理・修復してリビングでお使いいただけるようにしました。
ちょっとしたリビングボード、テレビボードなどとしてもお使いいただけます。
少しでも古く価値のある日本の良いものを残していけるように、お役に立てたら幸いです。
今回、リフォーム時に古い家具の修理・修復をご依頼いただいたお客様、実は新しい家具を新たにオーダーで製作いたしました。
古いものを修理・修復によって使い続ける判断にプラスして、長く使い続けることができるクオリティーの家具を足して過ごすというライフスタイルはとっても素敵だなと思いました。次回はその新しくお作りした家具をご紹介しますね。