昨日のこちらの中日ショッパー、ご覧になった方いらっしゃるでしょうか。

ど〜んと大きく載っていたのはこちらの家具。

「RESTORE」(リストア)と大きく出ておりましたが、「RESTORE」ってなんぞや?という方も多いかと思います。

一般的に「修理」(リペア)という言葉がよく使われると思うのですが、ダイニングチェアの汚れやクッションのへたった座の張替えや椅子のぐらつきなど日常に使用する場合に不具合がある「機能」面を直す時に「修理」という言葉が合うのではと思います。しかし、今回ご紹介する古い家具・調度品(アンティーク)は、長い時間を経て出来た風合いはそのまま残すようにして復元再生していきますので、「修復」(リストア)という言葉の方を使うことにしました。

そして、洋風の家具は「アンティーク」という言葉が一般的ですが、日本の家具に「アンティーク」はちょっと合わない…ということで、和の古い家具は「時代家具」という名前で呼んでいます。

 

さて、今回の事例のご紹介をしていきますね。

浜松市は残念ながら戦争で街の中心部は空襲があったので古い家屋は随分消失してしまったのですが、市内には古い時代には街道として賑わった箇所がいくつか残っていて、古い家屋もまだ残っているようです。

そういう古い街道沿いで呉服などの家業も一時期営みながら時を経てきたY家。古い家屋から2世代での新しいお家への建て直しをご計画されました。

家の歴史を新しい家へ引き継ぐという形で、家の部材の一部も古い家屋から利用するという壮大でかつ時間をかけて熟考されたとのことで、この際に長年蔵に仕舞ってあった家具も新しい家に取り入れようということでご相談を受けました。

修復する家具の決定後、お引き取りをして現在の状態を隅々まで確認します。

新しい家具と違い、古い時代の家具の造りに触れられますし、また時代を経てどのように使用されてきたかの歴史を見ることができます。かつて呉服業も営んでいらしたようで、その名残のある紙が貼ってあったり、レトロなの包装紙の一部などが貼ってあって、思わずいろいろと昔の話で盛り上がってしまいました(笑)

なんと明治16年の暦が。今のノベルティのカレンダーのようなものでしょうか。

虫食い、ひび割れ、欠損などの問題や、取手などのパーツ部分は錆だけでなく途中で違うものが取り付けられていたり様々です。また作られた当初のオリジナルから途中で修理をされているものもあり、それもチェックしていきます。

今回の修復は5点。そのうち2点は上部と下部で連結されている大型のものです。
新築でのお引越しの日取りが決まっていますので、そこに間に合うようにと打ち合わせをします。

まずはこちら。

上部と下部からなる大きな箪笥です。W1680 D475 H1740/SH870
全体の汚れ、貼られている紙札、なぜか一杯だけオリジナルと塗装の色が違う引き出しなどが目立ちます。

 

古い家具ですと、取手がいくつかなくなっていることもよくあります。
金具は錆を取って再塗装、もしくは新しくオリジナルに合わせて作り直したりすることもあります。

材料は杉や檜などいろいろですが、節のある部分が抜け落ちてしまっていることも多いです。穴から虫が入ったりとするので、とりあえず紙などを貼って対処された跡を見ることもあります。

↑こちらは修復後
内部の汚れを掃除して、腐ってしまって欠損していたり、穴や隙間などを塞いでいきます。
棚板や背板など構造的に強度が足りないものは、補強の桟をつけるなどして現在の使用に合わせていきます。

引出しの底板に穴が空いていましたので、木目まで合わせて丁寧に塞ぐ処理を施します。

本来の素晴らしい木目を取り込んだ扉面が現れました。
塗装はこうした木目や木の風合いを大事にした自然塗装を施してあります。

次はこの箪笥の隣に置きテレビボードとしてご使用を予定の収納箪笥をご紹介しますね。

こちらはテレビボードとしてご利用になりたいとのご希望でした。

下段の引出しの側板がどれもかなりひどく削れていました。

この引出しが、なんとこんな綺麗に修復されました!

こちらも木目をできるだけ合わせて削れた部分を新しく加えてあります。さすが家具の職人です。

取手も綺麗に修復し、どの引出しもスムーズに開け閉めができるように調整いたしました。

天板が薄く、隙間もあり、テレビボードの重量にとても耐える強度ではなかったため、外からは見えない天板の裏側に強度補強のための加工を施しました。

見づらいですが、白く線になっているところが、背板部分の隙間を新しく木で埋めた箇所です。


実際に見る迫力というか質感はなんとも言えないものでした。
新しいお住まいでご先祖の遺したものとまた新たな時間を共に過ごすのにふさわしい存在感でした。

次にご紹介するのはこちら。

 

こちらもお引き取りした時は全体の汚れがひどく、天板や棚板の反りや隙間などがありました。

こちらも上でご紹介した家具と同様に様々な点で修復・修理を施してリビングボードとして使用できるようにしました。

さらにまだ2点修復した家具がありますが、1回では盛りだくさんになってしまいましたので、今回はここまで。

また続きは近日中にアップしますね。どうぞお楽しみにお待ちください!