雨ばかりの日々が続いてましたが、ようやく夏らしい暑いお天気が戻ってきたようです。

変わらずお家時間が多くなる現在の状況ですが、少しでもそんなお家時間が快適になるような情報を発信していきたいなと思っています

 

さて、今回お伝えするのは、浜松市内にある歴史あるこども園の木製家具の修理リペア・修復リストアの事例です。(少し量が多いので、お時間ある時にお読みいただけたらと思います。)

 

70年近い歴史のあるこども園からご連絡をいただいたのは昨年の冬のことでした。

創設して初期の頃は、お近くに木製の家具作ってくれるところがあったそうで、子供達の机や椅子、教卓など様々な物を作ってもらっていたそうです。その後、現在のスチール脚などが材料となった大量生産のものが増えていったそうなのですが、今も行事などちょっとしたことに使われているとのことでした。

最終的に、教卓が7台、ローテーブルが2台、長机が33台、椅子が11脚の修理修復を半年ほどのお時間をいただいて修理修復をすることとなりました。

 

まず教卓からご紹介しますね。

見ての通り、随分黒ずんで汚れや傷が目立ちます。

教卓は7台あったのですが、全てが同時期に作られたのではなく、途中追加されたり、修理されたりして使用されてきたようです。

なので、全体は同じようなデザインですが、造りが所々違っていて、1つ1つその造りと不具合を確認し、修理修復していくことになります。

天板は傷や削れがあり、板と板の間に隙間ができています。塗装もニスでしょうか、汚れもあり状態は悪いようです。

上の画像の天板中央部分、大きく隙間ができていますね。

修理修復のために、全て一旦パーツをバラバラにしてパーツ毎の修理をしていきます。

そして、1つ1つのパーツの塗装や汚れを綺麗にしていきます。

天板に使われているラワン材は、一枚の板の中に逆目と順目が交互に出てくることもあり、鉋での作業は難しかった為、サンダーなどで塗装や汚れを落としてから、新たな塗装にむけて少しずつ研磨していきます。

綺麗にしたところがこちら。

白く、随分綺麗になりました!

引き出しもそれぞれ材料や造りが違っていて、かなり痛みが。

左が修理前、右が全体を綺麗にした塗装前の状態。

 

教卓ということで、濃いめの色、ウォールナット色で塗装しました。

天板のすぐ下、若干いろが薄く見えている部分は新しく作り直して追加した部分です。
オイル塗装なので、下地の木目が見えます。ですので、新しい白い木は色が薄く、元の木は濃いめに仕上がります。

内側もかなり痛んでいたので、補強が必要なところは補強のパーツを加えたり手を入れていきます。

天板も綺麗になりました。

分かりづらいですが、左端の若干色が違うところが、天板の隙間を埋めたため足りなくなった部分を新しく加えたところです。

引き出しも修理修復が難しいと判断したものは、新しく作り直しました。

引き出しも造りが何種類かあり、1つずつ丁寧に直していきました。

強度が必要なところは補強をして、また長くお使いいただけるようになりました。

先に完成した教卓をこども園へ納めさせていただいた時の写真がこちら。

園長先生が、この教卓を見るとかつていらした先生方のことを思い出すんです、と仰っていました。

あの状態のままでしたら、いずれ処分という形になったかもしれません。

今回の修理修復でこれまでの思い出とともに、またしばらく多くの子供達や先生方と一緒に過ごしていただけそうです。

 

次はローテーブル。

2台のみだったのですが、こちらもなかなかの痛みっぷり。

 

1台は棚板の板が崩壊寸前。。。そしてもう1台はすでに崩壊してしまって影も形もない状態。。。

天板もなかなかの状態に。

多くの方はこの状況になってくると物置にしまってしまうとか処分しちゃうのかな〜と思います。

ですが、木のモノって、手を加えれば新品のようにとまではいかないまでも、ある程度までは直っちゃうんです!

こんな風に↓

チェリー色で塗装し、新しい棚を付けました。

そして、33台という大量の長机。

こちらも1つ1つパーツをバラして綺麗にしていきます。

表面をざっと綺麗にしてバラしたパーツはこんな感じになります。

使えるパーツは綺麗にして、不具合があるものは新しく作り直して全てのパーツを整えたら、組み立てていきます。

さらに塗装をかけるために表面を綺麗にして塗装作業をしていきます。

ローテーブルと同じチェリー色で塗装をしていきます。

上の画像を見て分かるように、高さもいろいろ違うんです。

 

最後に11脚の椅子を。

 

組みで作ってある可愛らしい椅子ですが、多分専門外の方が応急的に処置されたであろうという箇所が多く見受けられました。

これも全てバラして、不具合のあるパーツは新しく造り直して組み立てていきます。

しっかり以前のように組んだ造り、表面も綺麗にして見違えるようになりました!

塗装前だとほぼ新品に見えますよね。

これを長机と同じチェリー色で塗装するとこんな風に。カワイイですよね。

かなりの量がありましたが、なんとか6月中旬に完成して納品させていただきました。

 

今回の家具は、現在の木屑を固めたパーティクルボードやプリント紙貼りの素材の造りではなく、かつスチールなどが使われていない、どこもかしこも無垢材でそれを組んである造りだったからこそ修理修復が可能であったと思います。

納品時に園長先生とお話しをさせていただいたのですが、やはり最近のものは丈夫そうでいて、一旦壊れるとそれまでなんです…と仰っていました。
今、天然木でそれも組んであるような造りだと新しく作るとなるとお値段もそれなりにしますので、大量生産されている製品の方が安価に手に入ります。

ですが長い目で見ると木製ならばの良さがたくさんありますし、なんと言っても月日を経た思い出がいっぱい詰まっていて、その積み重ねを歴史と呼ぶのだなとつくづく思いました。
そんな家具と過ごせる子供達、とっても良い体の経験なのでは。

軽くて丈夫で使い勝手が良いとのこと、納品後伺った時も長机とローテーブルを組み合わせてこどもたちが遊んでおりました。

 

最後に。今回の塗装ですが、全てオイル塗装で塗装をかけました。
当初は汚れなどのことも考えてウレタン塗装を考えていたのですが、ウレタン性能のオイルもありますので、子供達が使用するということとメンテナンス等を考えて、オイル塗装を選択しました。
それにオイル塗装の方が木目が綺麗に見えて木の肌触りも感じられてますので。子供達にはできるだけ木の素材そのままを味わってもらいたいと思いました。

今回は量が多かった為、出来るだけ乾燥時間が短いものや汚れや傷に強いものやその方法をオスモ社の方にもご相談し教えていただき作業を進めました。

オスモオイルは安全面はもちろんですが、日々のお掃除に使える植物油洗剤のオスモウォッシュアンドケアーというのがあり、さらにオスモワックスアンドクリーナーというのがあって頑固な汚れや塗装のツヤや撥水性を蘇らせてくれるメンテナンス商品があります。

とりわけウォッシュアンドケアーは希釈性で結構いろいろな箇所に使えるのでオススメです。

もしご関心ある方はどうぞこちらをご覧下さい。

 

修理をすることは、新しいものを作るより手間も時間もかかることがあります。
また修理修復できる職人も高齢化して少なくなってきていますし、材料も手に入りづらくなってきています。
大変ではありますが、モノを大切に使う気持ち、モノ作りを伝えていくことに少しでも貢献できることがあればという気持ちでいます。

当店ではこのような施設の修理修復のご相談にも対応しておりますので、何かございましたらどうぞお尋ねください。

 

そして最後になってしまいましたが、このたびの大変貴重な経験をさせていただきましたこども園の皆様に心よりお礼申し上げます。
また沢山の楽しい思い出をこの家具とともに子供達が過ごしていけますよう願っております。