厳しい暑さが続く季節となりました。湿気の多いこの時期は、桐箪笥も湿度の影響を受けやすい季節です。

長い年月を重ねた家具は、湿気や乾燥を繰り返すことで、割れや反り、カビなどが生じることもあります。

しかし、そんな大切な家具も、適切な修復を施すことで、その美しさと機能を取り戻し、これから先も世代を超えて受け継いでいくことができます。

さて、今回ご依頼いただいたのは、推定150年近く受け継がれてきた総桐の夫婦箪笥です。

現在90歳のおばあさまが嫁いだ際には、すでにご自宅にあったというこの箪笥。おばあさまのお義母さまが嫁ぐ際に持参されたものではないかと伺っており、長い年月、家族の暮らしとともに大切に使われてきた夫婦箪笥です。

サイズは、幅約94cm、奥行約42cm、高さ約160cm。着物を収納する盆の幅は約85cmあります。

一般的な桐箪笥は幅約105cm、大きなものでは115cmほどあるため、この箪笥は比較的小ぶりなサイズです。

しかし、夫婦箪笥として丁寧につくられた、上質で希少性の高い総桐箪笥でした。

状態を確認すると、木釘を用いた昔ながらの造りや、趣ある真鍮の金具など、随所に当時の職人の確かな仕事がうかがえます。

一方で、長い年月を経たことで、扉の裏にはカビが発生し、一部には割れやひずみも見られました。

そこで今回は、本来の美しさを取り戻すため、丁寧な修復を行いました。

まずは金具を一つひとつ取り外し、箪笥全体を洗浄。長年蓄積した汚れを落とした後、十分に乾燥させます。

続いて木部の状態を細かく確認し、傷や割れ、ひずみを補修。表面を丁寧に削り整え、木の風合いを生かしながら色味を合わせて仕上げていきます。

最後に金具を取り付け、長い年月が育んだ趣を残しながら、美しさを取り戻した一棹へとよみがえりました。

修復後の総桐夫婦箪笥がこちら。

木肌の美しさがよみがえり、落ち着きのある上品な佇まいに仕上がりました。

扉の内側も、美しく修復しています。

修復前はカビによる汚れが見られましたが、丁寧に洗浄・補修を行い、清潔な状態へと整えました。

引き出し下部の割れも、違和感なく補修しています。

細い割れが生じていた部分には桐材を埋め込み、周囲になじむよう一つひとつ丁寧に成形・仕上げを行っています。

真鍮の金具も、一つひとつ丁寧に仕上げました。

横から見ても、美しい佇まいです。

背面に見られた割れも補修し、表からは見えない部分まで手を抜くことなく仕上げています。

修復前は年月による傷みが目立っていた箪笥も、職人の手仕事によって、木が本来持つ表情と上品な佇まいを再び取り戻します。

古い家具は、傷みがあるから価値を失うわけではありません。

丁寧につくられた家具だからこそ、適切な修復を施すことで、これまで刻んできた歴史を受け継ぎながら、この先も使い続けることができます。

受け継がれてきた大切な家具を、次の世代へ。

一棹の家具に込められた時間と想いを未来へつないでいくこと。それもまた、私たちが大切にしている仕事のひとつです。

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